治験と新薬

治験薬T-DM1:私は対象外

アレルギーの専門医に会うため、病院へ行く途中、主治医から携帯に電話が入った。タイケルブが使えない場合の次の薬の第一候補は、まだ治験段階にあるT−DM1と言われたけれど、これは測定できる癌がある患者のみを対象にしているからと、私はこの治験に参加資格がないことを知らされた。懇願という手も試みたけれど、同じ理由で断られたと言う。私は癌を取ってしまったから、測定可能な癌は今はない。

安全で、別名スーパーハーセプチンと呼ばれるほど、既存のハーセプチンより優れた効果を期待されている新薬は、残念ながら現在の私には手が届かないということになった。残念。

でも、アレルギーの専門医のところへ行くと、タイケルブにたとえアレルギーがあるとしても、ショック死を恐れず、少ない量から少しずつからだを慣していくことは可能だと言われた。ショック反応は、あるとすると、普通服用から数時間以内に起きるので、今まで息苦しいとかの反応がない私がショック反応を起す可能性は非常に低いと言う。T-DM1に手が届かないことがわかった今、これは大変うれしい知らせ!

はっきり白黒をつけるスキンテストがあるのかどうか、調べてもらい、あればテストをしてくださいとお願いして帰宅。

癌がみつかった生検から、まもなく3ヶ月が経とうとしている。第三次の抗がん剤療法はタイケルブの副作用でつまづいてしまっているけれど、突破口が開けて、癌退治を一日も早く再開したい。

医師たちの熱意

再びタイケルブ開始

アレルギーの医師からさっそくに電話で、タイケルブは錠剤なので、アレルギーの有無を調べるスキンテストはできないと知らせが入った。

主治医である腫瘍科医からもメールで再びタイケルブを飲み始めるようにと指示が入った。

アレルギーがあるかどうかはわからないままだが、少なくともショック死は恐れなくてもよいようなので、少量から徐々に錠数を増やし、体を慣して行く作戦を再開。

とりあえず、再び2週間2錠を続け、湿疹がでなければ3錠に増やす。

ただし、この作戦でも湿疹を抑えることができなければ、タイケルブは諦めることになる。

熱意ある医師団に支えられて

ネットで調べてみると、T-DM1の治験は数多くあり、参加者の条件もいろいろで、必ずしも転移のある患者だけではないことに気がついた。根気よく探したら、どこかの病院に私でも参加できる治験があるかもしれない。少なくとも、Dr. Glaspyは2ヶ月おきにUCLAのプログラムをチェックしろとおっしゃった。

カイザー病院の主治医は、UCLAのDr. Glaspyと直接コンタクトを取り始めてくださっているが、ジョージが、「違う病院の医師同士がこのように連結することは、アメリカでも珍しい。君はとても恵まれているよ。」と言った。

私のケースは特殊だからなのかもしれないと思いつつも、出会う一人一人の医師たちから、熱い支援を受けているのを感じ、主治医とはまるで二人三脚でもしているかと思えるほどに近くに感じられ、勇気と感謝の気持ちが足下からふくらんでくる。

神様がこんなにも頼もしいお医者様を与えてくださった。がんばんなきゃ!

癌新治療画期的な成功!

「画期的な癌の治療研究が成功!」と、アメリカ中にニュースが駆け巡った。

まだ初期段階なのだけど、たった3人の患者さんをもとにした治療結果なのだけど、癌を封じ込む新しい治療が生まれようとしている!

これはペンシルベニア大学メディカルセンターが発表したニュース。

3人の進行した白血病の患者さんから抗体の働きをする白血球T細胞を取り出し、癌をアタックできるように改良して,再び患者さんの血管にもどしたところ、わずか数週間で2人の体からは100%癌が消え去り、残る一人も癌細胞が70%も消滅したという。

さらに、この改良されたT細胞は体の中で増殖し、白血病が再発しても癌攻撃を続けることができるだろうとも。

T細胞は体の中に入った異物を認めて攻撃する免疫細胞。でも、自分の体の中から生まれる癌は認識できないため、普通は癌ができても攻撃できないのだという。しかし、研究者たちは、このT細胞に、改善した遺伝子(下のABCニュースでは害のないHIVウィルスと説明)を埋め込んで、サイボーグのように強化させた。

研究費不足のため、研究は大変小規模なものであり、まだまだもろ手をあげて喜ぶには早すぎるようだが、抗がん剤も、放射線療法も、手術もいらない、たった一本の注射で癌を治すこの治療法が確立したら、他の癌にも同じ手が使えるようになるだろうとニュースは伝えていた。

私たち癌闘病者を助けにやってくる”ターミネーター”の足音が聞こえる!

癌を恐れなくてもよい時代がまもなくやってくる!

大勢の人の祈りが叶えられるときまであと少し!

がんばれ研究者たち!

治験というギャンブル

T−DM1の治験に参加できるかもしれないと、新しい担当医は私を治験をしている、我が家から車で1時間ほどのベルフラワー市にあるカイザー病院に紹介をした。

治験に参加する場合は、治験に先だち、2週間、全ての薬を止めなければならならず、その前には参加資格があるかどうかを調べる審査を受けなければならない。

新しい抗がん剤を始めてしまうと参加資格を失ってしまうので、審査の結果がわかるまでは、新しい抗がん剤も始められない。

PETスキャンは1cm以下の癌は捕らえられないと、さらに癌があるかどうかを調べるため、今週はさらに全身のCTと骨のスキャンを取った。

PET/CTスキャンが癌を捕らえてからはすでに一月。この間に癌がさらに進行している可能性はあるのに、治験のプロセスは長くて遅い。

治験に参加できても、T−DM1を受けられる保証はないし、受けられてもそれで癌が消える保証もない。T−DM1は諦めて、今すぐ手に入る抗がん剤を始めた方がよいのではないか?

迷う私にジョージが言った。

「何人もの医師がT−DM1を薦めたんだ。そのT−DM1はこのチャンスをのがしたらもう手が届かないかもしれない。不安なのはよくわかる。でも不安に操られて決断を間違ってはならない。一緒に祈ろう。」

正しい決断がくだせるよう、知恵をくださるようにと祈った。

そして翌日、病院から電話。

5/3の審査の予約が明日の月曜日4/30に早まった。

T−DM1に手が届くかどうかも、いつから始められるかもわからないまま、この大きなギャンブルに命をかける。

治験審査失格

ベルフラワーのカイザーで待たされること約2時間半。やっと診察室に入ってきた先生はまず治験の手順について説明をした。

審査の結果がでるまでは1週間。それからさらに治験開始まで2−3週間かかることなどを聞いたところで、私はアドリアマイシンとゼローダを試していないのだけど、と言うと、医師は表情を変えて、それでは治験に参加できないと答えた。

あっけなく、審査も始まる前に参加資格がないことが明らかになった。

T−DM1の治験はすでに最後の第三段階の実験を終わっており、今おこなわれている治験は、希望者に少しでも機会をあたえようという追加の実験なのだと言う。市場にでるのもすぐだと医師は言った。

もっとも1年も前から「すぐだ、すぐだ、」と言われてきているのだけれど。。。

治験の参加資格がないのなら、再び審査を試みるように、上記の二つの薬を試すことを医師は薦めたけれど、ダメと分かった時点で、私の気持ちは治験をあきらめ、パクリで始めることに固まった。

もしかしたらT−DM1を使えるのかもしれないと一抹の希望が消えたことは残念だけれど、これ以上時間を無駄にせず、水曜日からパクリを始める。

生検のための気管支鏡検査をして以来、咳がでるようになって、あの日に日に大きくなった肉芽腫のように、癌も私の体の中で毎日成長しているかもしれないと思うと、むしろいつ始まるかわからない治験を待つより、これでよかったのかもしれない。

治験にはいろいろな種類があり、次から次へと新しいものが登場する。治療がいきずまってから探すんじゃなくて、治療を受けながら、余裕をもって適合するものを探すべきだと思った。パクリを始めながら、今後も私にあう治験を探し続けようと思う。

パクリはまた脱毛する。白血球の値も下がり、免疫力も弱くなると言う。

さあ、どれほど副作用に耐えられるか、神様が私の体にたくさんの力を与えてくださるよう、そしてパクリが私の癌に効果を示すことを祈る。

T-DM1陳情書

私の命を救うかもしれないT−DM1の陳情書をインターネットで見つけた。


1000人分の著名を集めて連邦議員にこの夢の薬が一日も早く認可されるように働きかけるもの。発案者がどんな方なのかはわからないけれど、最初の著名はフロリダから5/7にされている。

すぐにサインして、家族や友人たちに協力を仰ぐため転送したところ、息子たちや義娘の名前もすぐに陳情者名簿に現れた。そしてわずか半日で陳情者の数は100余名から400名を越えた!

コメントをみると、「友達のお母さんの乳ガンが肺に転移した。一日も早くT−DM1の認可を!」等と明らかに息子の友達と思われるものがいくつかあった。

ネットの力って凄い。

この新たにサインをした300名あまりの人の中には、もちろん息子たちの友人以外の人も含まれているに違いない。

でも、私がこの陳情書を見つけた昨夜までの平均著名数は日に30名ほどだったことを思うと、これは息子たちの力が影響していると思わずにはいられない。

彼らのたくさんの友達が会ったこともない私のために協力してくれていると思うと、奇跡を見ているような気がする。

そして、次男からのメール。

「おかあさんのために1000人の著名を集めるからね。最後まで勇ましく闘って!」

うれしくて、涙が溢れた。

 

新薬登場!でもまたも不適合

T−DM1に隠れて目立たないでいるけれど、 Perjeta (Pertuzmab)と呼ばれる同じくHer2陽性乳がんのための分子標的薬が6月8日にアメリカで認可された。

報道によれば、この新薬単独だけではよい成果はでなかったそうだ。それが、ハーセプチン+ドセと一緒に組み合わせたところ、ハーセプチン+ドセのみの場合では、癌緩解期間中間値が12.4ヶ月だったのに対し、それよりも6.1ヶ月長い、18.5ヶ月という成果を残したという。

脅威の薬と話題を独占しているT−DM1の治験では、既存の抗がん剤が癌の進行を抑えられる期間が6.4ヶ月であるのに対しT−DM1は9.6ヶ月であったとある。

わずか3ヶ月の違いでも、画期的と表現されることを思えば、Perjetaとハーセプチン+ドセの効果はT−DM1以上と映る。

医療関係者たちがT−DM1にそれでも大きな期待をよせているのは、この薬がハーセプチンと抗がん剤を一つに合体させたもので、分子標的薬であるハーセプチンがまず癌細胞を捕らえると、捕らえたがん細胞に直接抗がん剤が打ち込まれるという仕組みが、健康な細胞も癌細胞も、やみくもにめった打ち、という従来の抗がん剤と全く違うから。

こんなT−DM1が世にでるのがまだまだ先の話で、治験にも参加できなかった私は、このPerjetaの登場を心待ちしていた。

転移がわかったとき、主治医と、6月に認可された際には、タイケルブから切り替えてこの新薬を使おうとまで話をしていた。

そんな待望の新薬が、期待通り認可されたのに、ニュースを良くみたら、これは転移癌のみ、それも、これから転移後初の治療を始める女性のみが対象とあった。と言う事は、私はまたしても対象外ということ。

薬の使用法も、ハーセプチン+ドセとの兼用のみと限られており、乳房摘出前の抗がん剤療法ですでにハーセプチン+ドセを経験、効果がなかった私は、この条件にも不適合。

T−DM1は手が届かなくてもPerjetaはいけると思っていたのに、またもがっかり。;-(

このような対象者や使用方法に制限があるのは、薬の生産能力がまだ弱く、大勢の患者に行き渡らないので、まずはなによりこの薬が必要な人から、ということらしい。

製薬会社のGenentechは、一日も早くこの生産性の問題を解決し、一人でも多くの女性にこの新薬が行き渡るようにしたいと言っているけれど、いったいそれはいつの日のことなのだろう?

やっぱり世の中甘くないなア。。

HER2陽性患者の味方ジェネンテックとロシュ

全く新しいタイプの薬T−DM1も、6月に認可を得たばかりのPerjetaも、ハーセプチンと同じ、HER2陽性タイプの乳ガンのために、スイスに本社のある(ロシュ(Roche)とアメリカのジェネンテック(Genentech)という薬会社が開発した分子標的薬。

BioWorldのサイトニュースによるとジェネンテックはHER2陽性癌の研究を30年も続けてきており、T−DM1もPerjetaも、ハーセプチンを開発した同じ研究室で、同じ職員たちによって10年も前から研究されてきたものだそうだ。

ロシュの目標は、ハーセプチン、T−DM1、そしてPerjetaの3剤を共に使って最強の療法を作り出すことだと言うけれど、これって聞いただけでも、とっても効きそうで頼もしい!

今もPerjetaとT−DM1を転移後の患者に一緒に使った治験は最終段階の第三期に、ハーセプチンとワクチンとを組み合わせた治験は第二期に入っているという。そして待望のT−DM1はこの秋にFDAに申請されるらしい。

HER2陽性乳ガンは他のタイプに比べると進行が早く、再発率も高い悪質なタイプでありながら、全体からみたら1/4の割合。

ホルモン陽性タイプ、トリプルネガティブのタイプについても、もちろん研究が進んでいるだろうけれど、HER2陽性ではロシュとジェネンテックがなんといっても強い味方と知った。

ハーセプチンの特許が2014年には切れるらしく、そうなると世界中の他の製薬会社が安い値段でハーセプチンを売り出しはじめるので、落ちる利益を、新薬を開発して防ごうということなのかもしれないけれど、こんなに徹底的にHER2陽性に的を絞って研究してくれている会社があるなんて、HER2陽性患者としては、ほんとうにうれしい!ハーセプチンが安くなるのも、これも歓迎。

こうして治療が開発されるのも、それだけ患者数が多いからなのだろう。癌になったのは不幸だったけれど、その癌が乳がんだったのは幸いだった。感謝。

リュウマチ薬が癌耐性を抑える?!

癌のハーセプチンへの耐性を抑える薬の治験が来年から始まる。

これはまたしてもHER2陽性癌封じ込めのためのうれしいニュース!

Bad News 

HER2陽性癌は乳ガンの中でも悪質でハーセプチンが開発されるまでは予後が非常に悪かった。

ハーセプチンが開発されて、生存率が大幅に伸びたものの、このハーセプチンが効くのはHER2陽性患者の半分だけ。そして、当初ハーセプチンが効いている場合でも、いづれは癌が耐性をつくっていくという。

治療の最初からハーセプチンを使ったのにもかかわらず、癌が消えなかった私はこのハーセプチンが効かない残念組の半分にはいるのかもしれない。

でも、その原因をミシガン大学の癌センターがつきとめた。

私の解釈が間違っていたら、どなたかどうぞ訂正していただきたいのだけれど、ニュースによれば、IL6と呼ばれるタンパク質がどうも悪の一因らしく、この値が多いとハーセプチンへの耐性が生まれやすく、転移や再発をも促進する幹細胞も生み出してしまうらしい。

ここからGood News!

でも、IL6はリュウマチ、糖尿病、肥満などの炎症性疾患を起こす因子であることがすでにわかっており、HER2陽性患者の味方ロシュが開発したRoActemra/Actemra (tocilizumab)が、このIL6抑制剤としてリュウマチ治療のためにすでに開発、使用されている。

シカゴ大学の研究者たちは、この抑制剤をハーセプチンと一緒にねずみの実験に使用してみた。

すると、癌は耐性をつくることなく、最後までハーセプチンに敏感に反応、減り続けたのだそうだ

ねずみの実験で成功しても、治験で3期まで成功しなければ、治療は世に出てこない。

今だ、今だ、と言われたT−DM1でさえまだ出てこないのだから、この治療も喜ぶには時間がかかる。

でも、この治験が成功したら、

私のような手強い癌も封じ込めるかもしれない!

HER2陽性患者の明日はますます明るくなると、やっぱりワクワクしてしまう。

手に汗握りながら、研究者たちの成功を祈る。

 

 

癌は消えているか?明日CTスキャン

連日日本は35度を越える猛暑とか。

こちらも天気予報では夏日、夏日、と伝えている。

でも、ここ、我が家は、窓を開けたら海からのやさしい風が入ってきて、暑さがほとんど気にならない。

6月のCTスキャンの結果が良かったので、体力半分、下痢や倦怠感、筋肉痛、湿疹、腹痛、手足のしびれ、と、絶え間ない副作用と格闘しながらも、このマイルドな気候にも恵まれて、心穏やかに夏を楽しく過ごしてきた。

そして、いよいよ明日は再びCTスキャン。

はたして癌は消えているだろうか???

産休開けの主治医と3週間前に話たときは、明日のCT結果が良ければ、もう2ヶ月今の3種の抗がん剤を続け、そして、その後は、6月に認可されたばかりの新薬、Perjeta (Pertuzumab)とハーセプチンに切り替えようという案が出た。

結果が悪かった場合については話さなかったけれど、副作用がてんこもりになってきたので、明日の結果が良くても悪くても、この新薬に切り替えてもらうことを考えている。

Perjetaは、T−DM1の話題の陰に隠れてしまっていたけれど、転移の治療をこれから始める人を対象に、ハーセプチンとドセとの組み合わせによってのみ使用、という条件付きで認可された、これも治験では目を見張る良い成績を出した分子標的薬。

私はこの使用条件に合わないので、使えないとがっかりしていたら、そんなバリアなど存在しないかのように、いとも簡単にこの新薬の名前が医師の口から出てきて驚いた。

今も半信半疑ではあるけれど、ハーセプチンとタイケルブのコンビが転移を抑えられなかったのだから、この組み合わせをPerjetaに切り替えられるなら、それにこしたことはないと思っている。

Perjetaに切り替えて、はたして私を悩ます副作用は軽減されるかどうか、癌を抑え続けられるかどうか、それは使ってみなければ分からない。けれど、この新薬に手が届くのであるなら、ぜひとも試してみたい。

現在使用中のパクリは2−6ヶ月ぐらいまでは効果を表し続けるというので、使用開始から4ヶ月目にあたる明日の検査では、まだ効果が期待できると思っている。

もちろん明日のスキャンの結果が悪かったらまたしても嵐に突入することになるけれど、今まだ落ち着いていられるのは、次はPerjeta、という心強い薬がある安心感もあるからなのかもしれない。

明日の結果が良くても悪くても、私の命は私を創造された神様の手の中。そう信じて、明日、行ってきます!

 

癌は消えていた!

今日は腫瘍科受診日。

診察室に入って来た医師はいつもの笑顔をみせながら、「安定してるって、結果だったわね。Good Newsよね。」と開口一番おっしゃった。

「確かに癌が成長してなかったのはgood newsですけど、癌がさらに小さくなること期待してました。」と言うと、

「あら、転移の決め手となったリンパ節の癌はみな見えなくなっているわよ。」と、意外な言葉が返ってきた。

我が耳を疑いながら、コンピューターに映し出された報告書を共に見る。

“No significant mediastinal and hilar adenopathy.”

「特異な縦隔及び肺門リンパ節腫脹(=癌)はなし。」

私はこの“No significant”の意味を“No significant change”つまり、癌に大きな変化はなしと解釈していたわけ。私の誤訳。

それがわかって、たちまち気持ちが明るくなった。

気分がすっかりよくなった私は、さらに他の肺の中の小瘤(小さな点のような陰)記述についても尋ねる。

左右両肺のあちこちに、いくつか小瘤が見つかっているが、これらは転移以前のスキャンでも観察されており、その当時からサイズに変化がない。つまり癌でない可能性があり、仮に癌であっても、成長していないことになる。

「観察される癌腫は消えたということです。」と聞いて、目の前がさらに明るくなった。

パクリはまだ効果を発揮していた!

 次のカクテル

癌腫が映像から消えても、まだ目に見えない癌細胞は間違いなく残っているだろう。

癌は幹細胞を持っており、これが、再発や転移を起こすのだと言う。

これが転移前だったら、このまま治療を終了することもできるけど、転移した後では、ずっと治療を継続していかなければならない。

この映像に癌が映らない状態、英語ではNo Evidence of Disease (病気の証拠がない状態)を、これからできるだけ長く保っていかなければならない。

新薬Perjetaについて再び話しをする。

ハーセプチンとドセとの組み合わせに限り、これから転移治療を始める人だけを対象に許可された薬。

一般の保険であれば、この条件から外れたら、保険適応外となるだろう。でも、私の保険は、私が通うカイザー病院の保険。”身内保険”であるから、医師が適切な理由を説明できれば、この枠から外れても保険が適応されるのだという!

ただし、どんな使い方も出来るという訳ではなく、治験で安全性と効果が証明されていなければならない。

Perjetaは6月に認可されたばかりの新薬だから、他薬との相性を示すデーターはほとんどまだない。でも、その少ないデーターの一つに、術前療法でパクリ+ハーセプチン+Perjetaを使用したものがあるらしい。

今私に与えられた選択肢は、現在のハーセプチン+タイケルブ+パクリを継続するか、或は以下の選択肢から別のカクテルを選ぶかどうか。

1)パクリ+ハーセプチン+Perjeta

2)ハーセプチン+Perjeta

3)ハーセプチン+パクリ

4))ハーセプチン+タイケルブ+パクリ以外の抗がん剤

 

「新薬Perjetaを今使うか、後までとっておくか、どうするかですね。」と医師が言う。

私も、今からPerjetaを使ってしまって、効果がでなかった、或は効果が持続しなかった場合、まだ認可どころか、申請さえもされていない次のT−DM1までつなぎ止めるのが難しくなるのは理解している。

でも、癌が縮小したなら、とことん続けて釘を打ち続けたい。癌にスキを与えたくない。そのためには、ここで、転移を許してしまったタイケルブをPerjetaに変更したい。

そう説明する私をみて、医師は、

「強気の作戦ですね。それでは、とりあえあず、パクリ+ハーセプチン+Perjetaで始めて、副作用がどうでるか見てみましょう。副作用が大変なようだったら、パクリを落としましょう。」

と言って、早速薬局にPerjetaがあるかどうか、今日から使えるかどうか調べてくると言って、部屋を出ていった。

診察時間はすでに1時間半にも及ぼうとしていた。こんなにも熱心に話を聞き、そして、理解を示してくださる担当医、Dr. Louに深い感謝の念をいだいた。

数分後戻ってきた医師は、結局、薬局にはまだPerjetaがないので、Perjeta開始は4週間後。次のクルーが始まるときからにしましょうと説明された。

1年半近く飲み続けたタイケルブは今日から中止。Perjetaを始めるまでに、念のため、タイケルブの効力が体から消え去るのを待つことになった。

これで下痢から解放される!

 

—いつも主が道を整えてくださっている。どんなときもそんな主を信頼せよ。—

 

私が命を預けた主が、大きなバリアを取り去り、見えないところに道を開いてくださった。そんな感謝の思いに満たされて病院を出た。

 

 

 

 

 

T-DM1ついに申請

たった今みつけたニュース。HER2 陽性患者待望の新薬T−DM1がついにFDA(食品医薬品局)に申請されたそうだ。

申請から認可までは約6ヶ月−10ヶ月かかるようだが、たくさんの陳情を受けて、認可は6ヶ月で降りるのではという見方が強い。だとすると、出て来るのは来年3月頃、もしかしたらそれ以前になる可能性もあるとのこと。

いよいよだー!

陳情書にサインしてくださった大勢の皆様、改めてありがとうございます!

 

新薬怖がらなくても大丈夫。。かも

新薬perjetaを現在使用中のパクリに加えることに不安を覚え、主治医に再度意見を求めた私。

彼女からの返事は、やさしさに溢れるものだった。

「(治療の選択に際し大切なことは)効果が期待できること。副作用に耐えられること。そしてなによりも、あなたが納得できること。正しい答えはだれにもわからないのだから、あなたが望むのなら、次のスキャンまでは薬の変更はしないでいきましょう。スキャンの後のことは、またその時点で考えましょう。あなたの心配はもちろんわかりますから、『ありがとう』なんて言う必要ないですよ。」

副作用が怖くても、Perjetaに変更するほうがよい、と言われたら、それに従うつもりだった。どちらがベストか、期待した答えはなかったけれど、私の意見をとことん尊重してくれる彼女に胸がジーンときた。

そして、点滴日だった昨日、ついにPerjetaを知っているという看護婦さんに出会った。彼女の患者さんはFDA(食品医薬品局)が指定した通りのハーセプチン+ドセとの兼用でperjetaを3週間に一度の割あいで受けており、3クールを終わったところと言う。

彼女曰く、副作用はマイルドで、患者さんの調子は変わりないとのこと。

私はパクリとの使用を考えていたのだけれど、副作用で視力を失いかけたという話を知り、怖くなったと言うと、「ネットに書かれている話は極端な例が多いですよね。うまくいっている人は黙ってる場合が多いから。ハーセプチンだって、使用前に副作用のページをみたら、リストが長くて、使うの怖くなるじゃないですか。Perjetaもハーセプチンと同じ(=副作用は少ない)と思いますよ。」との答え。

なるほど、とすごく納得。不安が潮のようにひいていくのが感じられた。

次のスキャンは10月末。スキャンの結果がどうでるかわからないけれど、再び、パクリと一緒にPerjetaを試してみようという気持ちになってきた。

 

T-DM1 まで後20日

昨年4月、縦隔リンパ転移が発覚したとき、相談した全ての医師たちが、私に必要なのはTDM−1だと言った。

スーパーハーセプチンと呼ばれるその新薬がいよいよ2月28日に認可されるかどうかFDAから発表される。

T−DM1は過去に一度申請されながら、2010年の審査で治験結果が十分ではないと却下されている。

今度も却下される可能性はあるけれど、2度目だし、もう2年以上も大勢の患者や医療関係者たちが待ちこがれているのだから、認可される可能性の方が高いと勝手に思っている。

どの医師からもT−DM1と言われながらまだ手が届かなかった昨年の4月は、T−DM1なしでは、私の運命はどうなるのかわからないというような切迫感があった。それがパクリのおかげで、癌を少なくとも画像から消し去ることができ、T−DM1に手が届くあとわずかのところまでこぎ着けることができたのだから、本当にうれしい!

パクリを勧めてくれたのは、診察を受けた医師たちではなく、このブログを通して出会った、日本のドクターMさんだったけれど、Mさんと私を守り続けてくださっている神様に感謝!

噂によれば、たとえ再びT−DM1が却下されても、治療に失敗してこの薬がなんとしても必要な人たちには特別に許可される可能性もあるらしい。

癌を抑えることができた私は、T−DM1にとびつかず、今の3剤が効果を表し続けるなら、そして、副作用がひどくならなければ、今しばらく今の薬を継続する予定。

ゼローダ+タイケルブ+ハーセプチンはT−DM1より効果あり?

T−DM1への期待は大きいものの、その一方で、期待し過ぎに警告を発する医師たちもいる。

昨日読んだ記事がその一つだった。

T−DM1対ゼローダ+タイケルブ2剤との比較治験では、ゼローダ+タイケルブに癌が反応した人たちが31%だったのに対し、T−DM1は44%と良い結果を示したものの、この記事を書いた医師は、もしゼローダをハーセプチンと一緒に使ったら、はたしてT−DM1はこれより優れた結果をもたらすだろうか?と疑問を投げかけていた。

ゼローダはハーセプチンと使った方が効果が期待できるというデーターがある。

彼によれば、タイケルブ+ハーセプチンはタイケルブ1剤よりも効果が期待でき、さらにハーセプチンは、効果を失っても、組み合わせを変えて使い続けると、全く止めてしまうより良い結果がでているという。

現在タイケルブは効果を失ったハーセプチンに代わって使わる薬となっているけれど、ハーセプチンは、どんなときも切り捨ててはならなず、仮にタイケルブを使うようになったとしても、ハーセプチンも一緒に加えろと言っているのである。

今の私はその例で、タイケルブ+ハーセプチンをゼローダと一緒に使っているのだけれど、この医師は、もしかしたらこの3剤のコンボは、T−DM1と同じほど、或はそれ以上に効果があるかもしれないとさえ言っている。

ホント?!だったらうれしい!

というか、彼は、T−DM1の副作用が少ない利点は認めながらも、効果については、現在の抗がん剤を本当に上回るのだろうかと疑問を投げかけているのだった。薬会社はFDAからの認可をなんとしても取りたいと思うがため、わざと良い結果がでるように治験を組み立てるから本当のところは分からないのだと言っているのだった。

この記事は2012年の9月にClinical Oncology(臨床腫瘍学)に発表されたもの。

一方、ハーセプチンの生みの親、ドクタースレイマンは、あくまでもT−DM1がベストとおっしゃった。

私はドクタースレイマンの意見を信じたいけれど、結局はやっぱり使ってみなければわからない。

次のCTスキャンは今月末の予定。上の記事の医師の予測が正しければ、良い結果が期待できる。そして、結果が悪かったら。。その頃にはT−DM1が待っているはず。

T−DM1の認可がやはり待ち遠しい。

 

 

 

やった!T-DM1がついに認可!

日本の癌友、ドクターMさんからメールでT−DM1が認可されたと知らせが入った。

さっそくGoogleニュースを開いてみたら、ある、ある!FDAがついに待望のT−DM1を予想より1週間早く2/22付けで認可したというニュースが確かにあった。

T−DM1につけられた名前はKadcyla。(日本語名は日本で認可されるときに決まるのだろう。ドクターMさんによれば、日本での認可はこの秋頃では?との予想)

お値段の方はなんと1月で約$9,800 (2013年2月現在 $1=93.4円)。ハーセプチンの2倍もする。

カイザー保険のおかげで、ハーセプチンは現在自己負担ゼロ。Kadcyla(T-DM1)も点滴薬だから、これも自己負担はゼロと期待しているけれど、はたしてどうなるだろう?

私の次のCT検査は2月27日と決まった。良い結果をもちろん期待するけれど、悪くても、これでいよいよKadcylaが使えるから安心。

著名運動に協力してくださった大勢の皆様。

願いが叶いました。本当にありがとうございました!

 

 

 

 

 

癌幹細胞をやっつける

癌が転移したり再発したりするのは幹細胞があるからだと言う。

Google国語辞書によると、 幹細胞とは「発生の過程や、臓器・組織・器官の再生・維持の過程で、細胞を供給するもととなる母細胞のこと。自分と同じ幹細胞を作る能力と、体を作るさまざまな細胞に分化する能力とをあわせもつ、未分化の細胞。」

癌の幹細胞は癌腫を形成する何万とある癌細胞のわずか1−3%だけだと言うのに、抗がん剤や放射線に抵抗してなかなか死なず、一つでも幹細胞が体の中に存在する限り、治療をいくら続けても、癌はもどってくるのだと言う。

でも、科学者はすでにこんな幹細胞をやっつける研究を始めている。

乳ガンの幹細胞について言えば、2006年に世界で最初の幹細胞をやっつける治験がミシガン大学の癌センターで始まり、今は最終段階の第三相治験がおこなわれている。第三相試験で良い結果がでたら、FDA(食品医薬品局)に申請され、審査の結果認可されたらいよいよ市場にでるはずだから、そう考えるとこれはもうすぐ実現するということになる。

この治験で使われている薬はMK−0752と呼ばれ、もともとはアルツハイマーの薬として開発されたのだそう。治験ではこれを従来の抗がん剤ドセと一緒に投与し、幹細胞と、それ以外のガン細胞を一挙に退治しようというのがねらい。

第1相と第2相の治験では幹細胞が顕著に減ったという良い結果が出たそうだ。

それでも、1個でも幹細胞が残っていたらいくら幹細胞の数を減らしても癌は戻ってくるのだから、そうしたら意味がないと思うけど、MK−0752を使った治験は乳がんのみならず、卵巣がん、膵臓がん、小児脳がん等幅広くある。

ドセできつい副作用を味わった私としては、幹細胞標的薬をハーセプチンとかT−DM1とかの分子標的薬と一緒に使った方が効果もあり、副作用の心配もないんじゃない?って思うんだけど。。。

癌闘病者支援昼食会にいらしたらYさんから、日本でも幹細胞標的薬の開発が進んでいると聞き、早速調べてみたら、大日本住友製薬が大腸がんを対象にした癌幹細胞標的抗がん剤の第3相の治験を今年の1月からアメリカ、カナダで開始したとあった。

癌完治100%の治療はまだないけれど、研究は確実に進んでいるようで元気が湧いてくる。癌撲滅の日を目指して研究者の皆さんガンバレ〜!!

パージェタの威力

HER2陽性癌で、4期、転移のある女性のための薬として、アメリカでは昨年の夏、日本でも最近認可されたパージェタが、今度は、術前抗がん剤としてFDAにより始めて認可される可能性が出て来た。

アメリカではまず手術で癌腫を取り除き、それから抗がん剤というのが一般的でありながら、術前に抗がん剤を使って癌を縮小するという治療も珍しいことじゃないと思っていた。けれど、どうやら公式に認められている術前抗がん剤というのは、アメリカにはまだ一つもなく、パージェタが初登場ということになるらしい。

先週入ってきたニュースによると、417人の初発HER2陽性転移前の女性が、術前にパージェタとハーセプチン組、パージェタ+ハーセプチン+ドセ組、ハーセプチンとドセ組、それからパージェタとドセ組の4組に分かれて12週間治療、その後、全員が手術を受け、効果の違いを比較した。

結果、パージェタ+ハーセプチン+ドセ組の45.8%の女性の摘出した乳房から、癌は完全に消えていたと言う。従来のコンボ、ハーセプチンとドセでの癌完全抹消の確率は29%だというから、45.8%とはすごい数字。パージェタ+ドセでは24%、パージェタ+ハーセプチンのみでは16.8%だったそうだ。

術前抗がん剤治療で癌を完全に消し去ることができたら、摘出手術も放射線療法も必要なくなる。そんな時代がまもなくやってくるのかもしれない。

パージェタが、そんなに威力があるのなら、私のような4期、転移した癌にも多いに期待して良いのだとも思う。

今はまだT−DM1の御利益を期待している段階だけど、将来万が一再発した場合でも、パージェタという手がまだあると思うとうれしい。

研究者たちは、これからさらに、誰がこの恩恵に預かれるのか、抗がん剤との相性を調べる研究を続けていくという。

あとは、こんな威力的な薬たちが、脳のバリアを通り抜けて、脳に転移した癌にも効果を発揮するようになってくれたらもっとありがたい。でも、きっとこれも間違いなく研究が進んでいるに違いない。

癌撲滅を目指して、がんばれー!

樹状細胞ワクチンが受けられる島

カリブ海に浮かぶイギリス領、Cayman Island (ケイマン島)。

Grand Cyman Island

このコバルトの海に囲まれた美しい島に、癌治療最先端の樹状細胞ワクチンを受けにでかけようとしている癌友がいる。

ワクチン療法は免疫療法の一つで、アメリカでは何種類かの治験が数年前から注目を浴びているけれど、その中でも、樹状細胞ワクチン療法は、最も成功している治療法だという。

日本の義弟からこのワクチン療法のことを知らされた私は、最近、脳転移のある4期の乳ガンと診断された癌友にこの治療法のことを伝えた。

癌友の旦那様は、さっそくリサーチを開始。日本まで飛ばなくても、カリブ海で、このワクチン療法が受けられることを発見したという次第。

オーダーメイドのワクチン療法

ワクチン療法というのは、患者の体の中からガン細胞を取り出し、私たちの体を感染源や異物進入から守る働きをする白血球細胞の一種、T細胞にこのガン細胞を教える。ガン細胞を見抜くことを学んだT細胞は免疫力を高め、癌細胞をやっつけるという、オーダーメイドの治療法。

樹状細胞は、このT細胞の働きを助ける、やはり白血球細胞の一つだそうで、樹状細胞ワクチンは、樹状細胞にガン細胞を認識させるワクチンだという。

治療は癌細胞を取り出す1回の手術(又は生検)と、4ヶ月間、4回のワクチン注射のみ。第一相の治験で、安全性はすでに実証され、予想される副作用は、免疫組織が働くときの発熱だけだという。

なぜイギリス領のケイマン島なのか?

医療の先進国アメリカで受けられない治療はないと思っていたけれど、どうやらそれは事実ではないらしい。FDA (食品医療品局)の厳しい審査のため、他の国では認可されているのに、アメリカでは認可されていない治療や薬というのは意外とあるらしい。

樹状細胞ワクチンの研究がケイマン島で行われるようになったのも、そんな厳しいFDAの審査の網をくぐるためだったようだ。

皮膚がんを対象とした樹状細胞ワクチン第一相、第ニ相の治験はすでにFDAの認可を受けて終了。これから第三相の治験認可を受ける段階にあるものの、FDAの管轄外であるからだろう。乳ガン、大腸がん、頭頸部がん、肺がん、卵巣がん、神経芽細胞腫、そして、骨肉腫患者の治療も可能だという。

脳はバリアがあるから、首から下とは別物。はたしてワクチンが脳まで効果を現すかどうか、とても気になるところだけれど、癌友が、予定通り9月にケイマン島に向けて飛べることを祈る。

 

ケイマン島での治療詳細はこちら。

http://www.perseuspci.com/

日本での樹状細胞ワクチン情報はこちら。

http://www.midtown-amc.jp/

 

カドサイラは脳転移にも有効

私が手に届く薬を探していたら、カドサイラ(T−DM1)は脳のバリアを通って、脳転移した癌にも届くことが最近分かってきたという情報に出会った。

カドサイラはハーセプチンとDM1という抗がん剤を一つにした薬で、ハーセプチンが癌細胞を追いかけ、つかまえたところで、DM1という他の抗がん剤の何倍もの力を持った抗がん剤が爆発、癌をやっつけるという仕組み。2013年に大きな期待を持ってアメリカFDAに認可された。

肺転移を告知されたとき、どの医師も当時まだ治験薬だったこの薬を私に薦め、治験には参加できなかったものの、幸運にもパクリで寛解をした後、認可がおり、私もこの薬を8ヶ月使って、寛解期間を延ばす事ができた。

乳ガンにはHER2陽性 (私の癌はこのタイプ)、ホルモン陽性 (エストロゲン陽性もしくはプロゲステロン陽性)、そして、いずれも陰性のトリプルネガティブというタイプがあるけれど、HER2陽性とトリプルネガティブは肺転移をすると、その後、脳に癌が飛ぶ確率が高いと読んだことがある。
でも、脳にはバリアがあり、そこを通れる抗がん剤は少ない。

タイケルブは粒子が小さいので脳に届くと言われているけれど、脳に転移した癌をやっつけるためには、相当の量を取らなければならないらしく、タイケルブを取っているから脳は大丈夫とは限らないと医師から言われたことがある。

カドサイラは強力であっても、脳には届かないといままでは思われていた。それが、届くことが分かってきたというのだから、これは大変な朗報なはず。

カドサイラの他にはアバスチンも脳のバリアを通るそうで、さらにGRN1005という新しいタイプのパクリも脳転移癌への有効性を調べる第二相の治験が始まっている。

私の場合、まだ脳転移はなく、カドサイラはすでに使ってしまっているので、はたしてどれほどこの情報が役にたつのかわからない。でも、うれしい情報に、再びカドサイラに賭けてみようという気持ちになっている。

見つけたHER2陽性治験薬

今後の治療に役立ちそうな情報を検索している毎日。

脳転移した後の治験、癌の耐性を抑える治験、ワクチン、癌幹細胞をやっつける治験など、様々な治験が始まっているけれど、私が今すぐ飛びつけそうな治験がない。

でも、秋になると、 MGAH22 (Margetuximab) という、HER2+3 (癌の勢いが一番強く速い)転移乳ガン患者(私が含まれる)を対象に、癌細胞だけを狙う分子標的薬、第三相の治験が始まる様子。

この薬はハーセプチンのように抗体の働きをする薬で、ハーセプチンより効果が高いことが期待されていると言う。研究室、動物実験、そして安全性を確かめる第一相の治験ではすでにこの仮説が証明されたそうだ。

HER2+1 及び+2の患者を対象とした第二相の治験は現在進行中。胃食道がんの患者を対象としたものも計画されているとあった。

ワクチンの治験、HER2陽性癌の再発を予防するものでは、GP2とか、NeuVaxとかが大変良い成績を出しているようだけど、これらは成長している癌に対抗するものではないらしく、そのタイプの治験としてはやはり樹状細胞ワクチンしか見つけられなかった。

でもこの治験はまだ安全性やワクチンの適切な量を調べる第一相の段階で、効果についてはまだ海のものとも山のものともわからないらしい。

私が心から尊敬するTRIO (国際臓器移植患者団体)Japanの、何人もの渡航移植患者さんのお世話をされてきたAさんはクリスチャンであるけれど、奇しくも私と同じ頃、同じように4期の癌になってしまった。

医師から治験薬と既存の抗がん剤との2剤の選択肢を与えられた時、少しでもデーターを提供できたら将来の患者さんの役にたてると、迷わず治験薬を選んだとおっしゃった。

自分の利は後回しに、いつも他者のことを優先して考えるAさん。治験参加の動機も私とは裏腹で、頭が下がる。

治験候補者の審査は厳しく、はたして私は治験に参加できるかどうかわからないけれど、もし、将来、治験参加が叶うならば、Aさんに少しでも見習って、謙虚な態度で臨めるようでありたいと願う。