輸血なしの新治療

以前、臓器移植の患者さんを見舞いに病院へ行ったとき、医師が、「完全な治療というものはない。AとBと、どちらがリスクが少ないか比較し、リスクの少ない方を選んで治療をしている」とおっしゃっていたが、今日は、私たちの医療がそのリスクを回避する方法を絶えず求めて前進している様子を垣間見た気がした。

「より良い予後のための新しい外科療法」というセミナーの案内が届いたので出かけてみた。

セミナーの焦点は、輸血のリスクと、それを避ける治療方法について。

輸血には感染や血液細胞の変形、心臓発作や脳卒中、癌発生や死等のリスクが伴うが、驚いたことに、これらのリスクは輸血がもたらす利益よりも大きいことが近年わかってきたらしい。

血小板や血漿のみといった血液成分の一部を輸血する場合、また自分の血液を輸血する場合ではリスクは低下するけれど、どうやら輸血が人の命を救うという考えは、過去のものとなりつつあるようだ。

輸血がよくないということで、出血を最低限に抑える様々な外科的処置法が生まれたが、この研究が進んだのは、なんと、エホバの証人と呼ばれる宗教グループが、自分たちの信仰に反すると、頑として輸血を拒んで来たためだという。

彼らの信仰を笑う変わりに、彼らの意思を尊重して輸血以外の治療を求めてきたことが、新しい治療の開発に繋がったという。

少なくともアメリカでは、輸血を拒むことができ、拒まれては治療ができないと思う医師は、他の医師に患者を回さなければならないのだそうだ。これも驚き。

最後質疑応答の時間に、抗がん剤は新しく生まれたばかりの血液細胞をもアタックしてしまうから、ときに輸血が必要な危機に瀕する。そうしたらどうするのか?と会場から質問があった。

難しい質問と前置きしながら、医師は、抗がん剤の量を減らすか、血液細胞を増やす薬を使うのが別の選択肢でしょうと答えていた。

常識が常識でなくなる。

医療は本当に日々進化、進歩しているんだと思った一日だった。

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